珍奇な植物 -ビカクシダとは-ビカクシダ(Platycerium.spp)を育てていると、この植物は「飾る」よりも「環境を組む」対象だと実感します。貯水葉と胞子葉という二形成の構造は知られていますが、実際に日々向き合っていると、両者が環境に対して全く異なる応答を示し、その結果として株の姿が決まっていくことがわかります。 貯水葉は若い時に光合成を担い、その後褐変して層をつくり、基部を保護しながら落ち葉や微細な有機物を抱えて湿り気と温度をtっ要請する役割を果たします。単なる’枯れた葉っぱ’ではなく、株の「住居」のような存在です。 一方、鹿角状に分岐する胞子葉は、光の量と方向、空気の動き、湿度の勾配に敏感で、分岐や厚み、トリコームの乗り方までも変化します。私は、この反応の細やかさに魅力を感じ、部屋の壁面を使って株がベストを出せる場を設計する前提で育てています。 管理は、壁に固定したエキスパンドメタルに掛けて、上部、中央、下部におおまかなゾーン分けをしています。上部には強めの光で締めたいベイチー系の立場タイプや、胞子葉をアッパーに気味に育てたい個体を掛けます。中央は、ウィリンキーなど、枝垂れる線の美しさを活かしたい個体を中心に掛けます。下部は光量が弱めなのでまだ小さい子株や奉仕培養上がりの若い株を掛けています。 光はアマテラスLED20W(スポット型)とBRIM PANEL A(パネル型)を使い分けます。 植物の反応を数値で捉えたいので、PPFD値を指標にしています。 私の環境の目安では、アマテラスは中心直下で40cm前後でおよそ350〜400、ブリムは20cmで500前後〜1mで70~90前後と距離によって変わるため、これらを踏まえて株の掛け替えを行います。PPFDで語るようになってから、徒長や葉の薄さに悩む場面がかなり減り、狙った質感に近づけやすくなりました。 風はバーバルのエクメアムーブをダクトレールに設置し、アマテラスと並べて複数個運転して常に対流を生むようにしています。運転時間はライトの照射時間と同じ時間だけ稼働させています。 コンポストは、ビカクシダ界隈では珍しく、猫チップ(ココチップ+日向土のブレンド)を使用しています。特徴として、繊維質と多孔質の異素材の組み合わせのため、常に空気(酸素)が行き渡り、根が呼吸しながらも水を受け入れられることが強みです。 水やりはほぼ毎日、溜め水にドボンではなくシャワーを使って流水であげます。こうすることによって、余剰となっている養分や微細な汚れ、植物の代謝した老廃物などを押し流すとともに、含んでいる古い水を新たな水に変えるイメージでたっぷりとあげます。これにより、常に根っこが健全な状態で生長できる環境が整うので特に初心者におすすめです。 水苔のように間質の見極めに神経を使う必要がなくなり、リズムが整ってからは根腐れや葉先の枯れ、滲みが明らかに減りました。 施肥は液肥5,000倍を基本として、週に1〜2回の頻度で、低濃度、高頻度を意識して与えています。濃度のピークをなるべく作らずにする方がコントロールしやすいですし、実際調子がいいと感じます。ビカクシダは肥料喰いな植物であると言われますが、これは窒素成分のうち硝酸態窒素の変換が苦手な植物であることが分かっており、硝酸態窒素の分解・変換が遅いためであり、肥料をよく喰うのではなく逆にあげてもなかなか効かないため流出してしまっていることが原因であると考えられます。ですから、硝酸態窒素よりもアンモニア態窒素成分を含む液肥を極薄い希釈度で高頻度で上げることは理にかなっているのではないでしょうか。(アンモニア態窒素を上げる時の注意点は、アンモニアは毒性が強く、量を間違えると逆に植物を傷めてしまうことなるので薄めを徹底することです。)あとはおまじない程度に、板付けの際に元肥としてマグァンプKをふたつまみほど仕込んでいます。また、同じ頻度で活力剤も使用して、草体の対病性などを上げるための補助として活用しています。 こうして壁一面を環境装置として扱うと、ビカクシダは太陽光かでなくとも理想の草姿に近づいてくれます。貯水葉の層が暑くなり、奉仕葉の線が整い、株ごとの個性が自然に浮き上がるのを日々実感しています。 環境を組む面白さが育てるほどに広がる奥の深い植物なので、理想とする完成形に近づけるための工夫がより面白さを掻き立てる面白い植物です。 |